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今回のエピソードでは、燭台(ろうそく立て)をめぐってのレイチェルとモニカのやり取りがあります。
話がさかのぼることになりますが、まずはオープニング前に行われていた発端部分から。
[Cut to the living room where Monica is helping pack a box.]
モニカが箱詰めを手伝っているリビングに画面がカット。
モニカ: Hey Rach, aren't these candlesticks (holds up a pair) mine? (ねぇ、レイチェル、この燭台は私のものじゃない? [燭台を上に掲げる])
レイチェル: No, no, I bought those. (違う、違う。私がそれを買ったのよ。)
モニカ: Oh, right. I forgot. (あぁ、そうね。私、忘れてたわ。)
レイチェル: Yeah. (Rachel walks away.) (そうでしょ。[レイチェルは歩いて去る])
モニカ: (under her breath) That you're a liar! (Hides the candlesticks in a drawer.) ([声をひそめて] あなたが嘘つきだってこと(を忘れてたわ)。[燭台を引き出しに隠す])
「私が買ったのよ」と主張するレイチェルに、あっさり同意した様子のモニカでしたが、その後、レイチェルに聞こえないように、声をひそめて何かを言った後、レイチェルの箱ではなく、自分の引き出しに燭台をしまっています。
この部分は、I forgot. の後に、That you're a liar! と続いているのがミソとなっており、後半の文章の文頭 That にポイントがあります。
この文章はつまり、I forgot. と言った後に、I forgot that you're a liar! と言っているのと同じことになります。
言わば、I forgot... that you're a liar! と、間を空けてちょっと「タメた」感じですね。
I forgot. までの部分を聞く限りは、「それは私が買ったのよ」と言ったレイチェルに対して、「あぁ、そうよね、その燭台をお金を出して買ったのはあなただった、そのことを私は忘れてたわ」という意味になるでしょう。
つまり、その時点では、燭台はレイチェルの所有物であることを認めた発言になるわけです。
何がこの週末のボックスオフィスで良いのですか?
ところが、レイチェルが離れた後、、レイチェルに聞こえないように、That.. 以下を付け加えることで、「忘れてたわ…、あなたが嘘つきだってことを」という意味になる、ということです。
その後、モニカが自分の引き出しにすぐに隠したことからもわかるように、モニカはこの燭台は絶対に自分のものだと確信しているようです。
でもレイチェルが悪びれた風もなく、「それは私が買ったのよ」と言って持っていこうとしたことに腹を立て、「あぁ、そうだったわ。あなたはこんな風に、自分のものでもないのに自分のものだって簡単に嘘をつくような嘘つきだった。そのことをすっかり忘れてたわ。あなたに尋ねた私がバカだった。尋ねても嘘を言うに決まってたのに、聞くだけ無駄だったわ」みたいな意味で、そのセリフを言ったということになるでしょう。
ですから、それ以上、レイチェルを問い詰めることはせず、当たり前のように自分のものとして取り返したわけですね。
このように、後ろに that 節が続くような動詞が使われた場合、それに対する返答では、SVを省いた形でいきなりこのように That で文章が始まる場合があります。
あくまで私の印象ですが、ドラマ「24」で、よくこういう That を見かけるような気がします。
例えば、「24」の 2-11 (シーズン2第11話)で、
大統領: What are you saying, Mike? (何を言ってるんだ、マイク?)
マイク: That you do whatever it takes to find out... (ネタバレ厳禁なので(笑)以下略) (…を見つけるために必要なことは何でもやる、ということを私は言っているのです。)
のような形で出てきます。
つまり、I'm saying that you do... の最初の I'm saying の部分が、わかりきったことであるために省略されている感覚でしょう。
That で始めることで、say 以下で言おうとしている「内容」であることが明示されるわけですね。
その that を意識しないと、「(レイチェルが買ったってこと)忘れてたわ。(レイチェルに聞こえないところで) この嘘つき!」みたいに言っているように聞こえるでしょうか。
ですが、厳密に言うと、文頭に That があるために、いったんは「レイチェルが買ったってこと、私はうっかり忘れてたわ」と言ったように見せておいて、その実、「あー、忘れてた、レイチェルが(そういう)嘘つきだってことを」とレイチェルに隠れて言った、というオチになるわけですね。
どのように人々はとても間抜けになります
冒頭にそういうやり取りがあって、また燭台にまつわるシーンが出てきます。それが以下。
(Phoebe goes and lies down as Rachel opens the drawer Monica hid the candlesticks in and as Monica walks out of her room.)
(前回のシーンの続きで)フィービーは横になりに行く。その時に、レイチェルはモニカが燭台(ろうそく立て)を隠した引き出しを開ける。その時、モニカが自分の部屋から(歩いて)出てくる。
レイチェル: Monica! (モニカ!)
モニカ: Hmm? (Rachel holds up the candlesticks.) (んー? [レイチェルは燭台を掲げている])
レイチェル: Did, did you take these back? ((これは私のものだって言ったのに)モニカはこの燭台を(自分のものとして)取り戻したの?)
モニカ: No, no, I, I just, I liked them so much that I went out and bought some for myself. (違う、違う。私はただ、その燭台がものすごく好きだったから、自分のためにそれを買いに行ったのよ。)
レイチェル: Oh yeah, they're really great, aren't they? (あぁ、そうね、その燭台はすごく素敵だもんね?)
モニカ: I love them. (大好きよ。)
レイチェル: Yeah. (Monica walks away) Nice try. (Rachel puts them in a box.) (そうね。[モニカが歩いて去る] そうはいかないわよ。[レイチェルはその燭台を箱に入れる])
フィービーが去った後、レイチェルはモニカが引き出しの中に燭台を隠しているのを見つけます。
私のものだって言ったのに、あなたはそれを取り返したわけ?みたいに問い詰めていますが、モニカは、「お気に入りの燭台だったから、同じものを買いに行ったのよ」と嘘を言います。
その嘘の話を信じたかのように相槌を打つレイチェルですが、モニカに聞こえないところで、Nice try. と言った後、自分の箱にその燭台をしまっています。
言葉ではモニカのものであると認めたふりをして、今度はレイチェルがモニカから燭台を取り返したわけですね。
(レイチェルとモニカの行動パターンが似ているのが面白いです。さすがは親友…笑)
この Nice try. という言葉、「ナイス・トライ」の「ナイス」という言葉のイメージから、Good job. や Well done. のような「うまくやった、頑張った人への褒め言葉」の一種のように思う方もいるかもしれませんが、少なくとも上の場面では、相手のやったことを全面的に支持する言葉として使われているのではありません。
アーティストが自分の音楽を書いたもの
LAAD では、
nice try : used to say that what someone has done or guessed is very good, but not completely correct.
例) "I'd say you're about 35." "Nice try. I'm only 29."
つまり、「誰かがしたことや推測したことが、とても good だが、完全に正しい・正解・正確なわけではないことを言うために用いられる」。
例文は、「君は35歳くらいかな(って僕なら言うね[推測するね])」「惜しい。私はまだ29歳よ」
英辞郎にも、やはり、
Nice try.=惜しい。
と出ています。
「惜しい」、つまり、「パーフェクトではない」という感覚なのですね。
元々、try という言葉は、I tried, but.... 「やってみたのよ、でもだめだった」と続くパターンが多いですが、Nice try. も、「そのあなたのトライ(試し、試み)はなかなかナイスだったけど…(実際には失敗に終わった)」的なニュアンスで使われる場合がある、ということでしょう。
try という言葉自体は、必ずしも失敗と結び付くわけでもなく、日本語でいうところの「(成功を目指して)努力する、一生懸命やる」というニュアンスがありますね。
ですから、単純に誰かが頑張ったことに対する評価として、「よく頑張ったね」的なニュアンスで、Nice try. と言う場合もありそうな気はするのですが、少なくとも今回の上のレイチェルのセリフは決して褒め言葉ではない、皮肉っぽい表現だということです。
この Nice try. というフレーズは、タナー家の子供たちが活躍するシットコム「フルハウス」でよく出てきました。
例えば、フルハウス1-22 (シーズン1第22話)の「D.J. のずる休み」(原題: D.J. Tanner's Day Off)では、登校日に大好きなスターのサイン会があるので、D.J. (タナー家の長女)がパパ(ダニー)に欠席届にサインさせようと試みるシーンがあります。
D.J.: Dad, before you go... you wouldn't mind if I got an autograph of my favorite singer, Stacey Q, would you? (パパ、(旅行に)行く前に(聞いておきたいんだけど)…私の大好きな歌手のステイシーQのサインをもらっても構わない?)
ダニー: No, not at all. (いや、全然構わないよ[オッケーだよ]。)
D.J.: Great. You're the best dad. Just sign this note excusing me from school tomorrow, and have a wonderful trip. (最高。パパは最高のパパよ。私が明日学校を欠席するっていうこの手紙にサインして、それから素敵な旅をしてきてね。)
ダニー: Nice try, D.J. (そうはいかないよ、D.J. )
D.J.: Oh, come on, Dad. You just said I could have the autograph. (あー、いいでしょ、パパ。たった今、私はサインをもらえるって言ったじゃん。)
このセリフの流れからわかるように、パパに欠席届にサインしてもらおうというD.J.の作戦はあえなく失敗に終わったわけです。
「なかなかうまく頑張ったけど、残念ながら成功しなかったようだね」のような感覚で、「フルハウス」でこのような Nice try. が登場する時には「そうはいくか」「その手に乗るか」のような字幕がよく付けられていました。
今回のレイチェルのセリフも、まさにそういうニュアンスですね。
「同じものを買ったの!と言って逃げおおせたように思ってるだろうけど、こちらはちゃんとお見通しなんですからね。うまくやったつもりだろうけど、残念ながらあなたの思い通りにはいかないわ」という感覚だということです。
カタカナにすると「ナイスなトライ」という言葉になるけれども、その実は、「ナイスなトライだったけど、でも、結果は完全・完璧ではなかった」みたいなニュアンスがある、そのため「惜しいけどはずれ」という意味にもなり、相手がこちらをひっかけようとしている場合だと、「頑張ったけど、残念だったわねぇ〜」と相手の魂胆がミエミエであることを皮肉っぽく、それも「私にはわかってるのよ」とちょっと上から目線な感じで指摘するニュアンスにもなるようですね。
英語で言うと、"You were trying to trick me, but you failed." のような感じでしょうか。
頑張ってトライしたことは認めるけど、そのトライは完全に成功とはいかなかったようね、というニュアンスだろうと思います。
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